「それはどうですかね。今田佳織はあの日がバスガイドとしてのデビューの日だったそうです。右も左も分からないような状況では、運転手の名前や顔を知らなくても不思議ではないですよね」

「ふん・・・。それもそうか」
灰皿で火をもみ消しながら植園が言った。

 壁にあるホワイトボードに目をやる。そこには今回の被害者たちの顔写真が貼られていた。名前と死亡推定時刻が書かれている。

 吉沢も植園の視線を追い、
「怖かったでしょうね。容赦なく撃つ犯人を前に何もできなかったのでしょうから。ひどい事件です」
と声のトーンを落として言った。

「罪はあったのよ」

「え?」

 植園は吉沢を見て言った。
「生徒の証言からも明らかになったでしょう。彼らは鈴木良太をいじめていた、その報いを受けたの」