「バス会社はなんて言ってるの？」

「ええと、あの日運転をする予定だった運転手は犯人が名乗ったとおり山本という名前だそうです。彼は当日の朝、ロッカールームで後ろから頭を殴られて失神したそうです。手足をしばられ、何か薬をうたれたらしく夕方まで使用していないバスの中で眠っていたそうです」

「その間に犯人が運転手になりすましていたってことね。でも、バスの運転ってそんな誰にでもできるものなのかしら」
宙を泳ぐ煙を眺めながら植園が言った。

　吉沢はメモを眺めながら、
「確かにそうですね。犯人はバスの運転経験があるってことですかね」
と同意を示した。

「それに、ガイドの今田佳織は面識がなかったのかしら。自分の担当するバスの運転手くらい知っていそうじゃない？今田佳織も共犯だったってことはないかしら」