「結局、実際に海外に行っていたわけだし、彼らの容疑ははずれたの。でも、私は絶対にあの夫婦は事件にからんでいると思う。だから、これからも第一容疑者として捜査は続けるつもりです」
宣言のように植園は言った。

「親戚とかあやしいですよね。動機があるのはあの人たちだけだし」

「下川則子もね」
植園が唐突にその名前を出して、再び歩き出した。今度はゆっくりとした歩調だった。


「下川則子!?どうして彼女が」
驚きを隠せずに潤は聞いた。

「あなたたちをバスジャックした犯人以外に行方が分からないのが彼女だけだからです。彼女はあのバスからこつぜんと姿を消し、そして今も現れていない」
前を向いたまま植園は言った。

「でもっ、でも僕たちは彼女が処刑されるという言葉を聞きました。そして、最後に銃声が」

「言葉は言葉。実際に彼女が倒れるところを見ていないでしょう?」

「でも」

「彼女の血痕は発見されていないの」