「下川はどうなったんだろう」
潤は尋ねた。

 あの煙で何も見えなくなり意識を失った後、犯人たちは消え、そして最後の被害者であるはずの下川則子も消えた。いや、そうニュースでやっていたのだ。

 幸弘は足を組みかえると、
「まだ見つかってないらしい。あの時俺は犯人たちが外に出ようとしたのを見たんだ。その時隣には確かに下川はいた。そして銃声が鳴って・・・その後のことは分からない」
と苦しげに口にした。

「下川はまだ生きているのかな」

「さぁな。事件はもう俺たちの手を離れていったからな」
言い方がそっけない。自分を名指しした下川則子を許せないのだろうか。

 潤はやせた友人の顔を見た。
「皆川、疲れてるみたいだけど?」

「あんな出来事があったんだ。毎晩うなされてるよ、八木もそうだろう?」

「ああ。目が覚めるたびに汗だくになってる」