悔しそうに眉をひそめる潤を見て、植園は目を細めた。

「実際、あなたも鈴木良太をいじめていたのですか?」
ハッと植園を見た。いや、にらんだと言ったほうが正解かもしれない。植園は潤の考えなどお見通しで『罪のない』などを言って反応を見たのだ。あなどれないかもしれない。

「僕は・・・僕は学級委員です。いじめるわけなどないじゃないですか」
まるで挑んでいるような言い方だな、と我ながら思ってしまった。

「そうですか、いや、そうですよね。お話はよく分かりました。また何かお伺いしたいこともあるかもしれません。その際にはよろしくお願いします」
切り上げ口調で言って、示し合わせたかのように刑事たちは立ち上がった。

「あの」
母親が同じように立ち上がりながら言う。
「潤はもう北海道に戻っていいのでしょうか?早く連れて帰って、忘れさせたいんです」

「お母さん」
植園がまっすぐに母親を見た。
「事件はまだ終わっていません。警察の許可が出るまではここにいてもらいます。例外はありません」

 そう言うと、ふたりはお辞儀をして部屋を後にした。