耳元で女の声が爆発する。

「下川則子!」

 とっさに下川を見ると、青ざめた顔をしながらも目を閉じていた。まるで、自分が呼ばれることが分かっていたかのようだ。

「悪いけれど、これが最後の処刑よ。あなたたちもこれに懲りたら、もっと人生を大切にしなさい。もっと他人にやさしくしなさい、そして自分を大切にしなさい」

 違和感。女の声がさっきより遠い。

 カツンと何かが幸弘の右足にあたった。
 それは水筒のような物だった。

___なんだろう?

 そう思った瞬間、水筒のような物の口からすごい勢いで煙が出てきた。幸弘の鼻が何かをとらえた。何か変な化学薬品の臭いがする。

「なにこれ!」
亜矢子の声にそちらを見ると、その足元からも煙は噴出していた。

「動くな!」
そう叫んだ女の声に生徒の動きが止まる。煙が車内を白く染めてゆく。