「最後、皆川幸弘。彼がいちばんいじめていたと思う生徒は手を挙げなさい」

 長い無音に叫びそうになる。何かの音がする、と思ったら自分の奥歯が震えている音だった。それを必死にかみしめると、今度は体に伝染し悪寒が駆け巡る。

「いいわ、全員顔を上げなさい。あなたたちも前を向きなさい」
その言葉のトーンは低く、誰かの罪が確定したのが伝わってくる。

 前を向くとすぐにショウと目が合った。

 心配そうな顔を向けてくるが、安全圏にいる彼にすら怒りを感じて幸弘は目をそらした。

「さぁ、みなさんによって最後の罪人が確定しました。その人には悲しいけれど死んでもらいます。でも、忘れないでください。その人はあなたたちの罪をもかぶってくれたのです。ほとんどの生徒が殺されなくてはいけないところを、救ってくれたのです」

 まるで神父のような演説だった。生徒たちの中には涙を流しているものまでいる。

___あほらしい

 この期におよんでも幸弘は毒づいていた。なぜなら神父自身が悪魔だからだ。