悪寒が背筋を走った。こんなことで死ぬやつを決めるのか?

 幸弘は自分の呼吸が荒くなっているのを感じた。

 女は『裁判』という形をとり、最後の殺人を犯す。そして、それはこいつら生徒も共犯になるのだ。罪の意識を共有させよう、ということなのか。

「全員下を向いて目を伏せなさい。私が良いというまで目を開けてはだめ。顔を上げた生徒がいたら容赦なく撃ちます」

 いっせいに皆が顔を下に向けて目を閉じた。

 その姿は滑稽ですらあった。

 女は、こちらに顔を向けると、
「さ、あなたたちも後ろを向くのよ」
と言った。

 その声に寺田亜矢子がまた短い悲鳴を上げた。

「ほら、早く向きなさい。時間がないって言ってるでしょう」
 
 幸弘はため息をつくと向きを変えた。運転席側には夕日が差し込み、バスをオレンジ色に染めていた。