「あの、俺ですか？」

「皆川幸弘君でいいのよね？」
女が則子を振り返って不思議そうに聞く。

「はい」
則子は目を合わせない。

「どうして・・・」
そう言いながらも幸弘は立ち上がっていた。怒りよりも思考回路を落ち着かせるのに必死だった。通路に出ようとして何かにつまずきそうになった。それは仰向けのまま息絶えている麻紀子だった。

＿＿＿俺も、こうなるのか？

　あれほど怒っていたのも忘れ、幸弘は『こうはなりたくない』と強く思った。

　気がつくと、いつの間にか則子の隣に立っていた。

　これで、寺田亜矢子・下川則子・皆川幸弘の３人が前に並んだことになる。

　皆が自分を見つめていることに幸弘は気づいた。目が合うと、さっと避ける。それはショウも同じだった。