亜矢子の動きが止まった。

「何度も言わせないで。勝手な行動は死を招くだけよ」

「あ・・・」

「さぁ、前に出てきなさい」

「いやだ・・・」
先ほどまでの怒りはどこへやら、亜矢子は後ずさりをした。

「さっさとしんと撃つだけやで」
山本が右手を延ばし、亜矢子の胸あたりを狙った。その声に、亜矢子はうなだれ、死刑判決を受けたかのように青い顔で前に出てきた。

「それでいいのよ。まだあなたが死ぬと決まったわけじゃないわよ」
女が亜矢子の後ろに位置し、山本は銃口を亜矢子のこめかみあたりに押し付けた。

 現実味がないのだろう。亜矢子は黙ってされるがままにして目を閉じている。

「次はあなたが誰かを指名しなさい。渥美茜はだめよ、堂々巡りになるから」

 幸弘は茜の表情がゆるむのを見逃さなかった。


 結局は自分が助かればいいってことなのだ。

 そして、それは幸弘も同じかもしれなかった。