言葉が自然にこぼれた。

 それが男の耳に届くと同時に、短い銃声がして麻紀子の身体は大きく揺れた。

「中沢!」

 八木の声が聞こえたような気がしたが、急速に意識が遠くなってゆく。

 山本が手を離したのか、次の瞬間麻紀子が見たのは天井だった。


「残念や」
そう言って自分を見つめる目を、麻紀子はぼんやりと見ていた。


 血の臭い

 
 火薬の臭い


 死の臭い


 光の消えた目は、山本を見つめたまま濁ってゆく。