突然髪をつかまれたかと思うと、麻紀子の身体は通路に投げ出された。激しく補助席に頭を打ちつけ、一瞬目の前が真っ暗になる。


「聞いてるんや!何が変なんや!?」
痛みよりもドスの聞いた声に、意識を失いそうになる。

「なんでも、なんでもありませんっ」

___なんでもなくない

 こんな時にもかかわらず、違和感がムクムクと形をなしてきているのが分かった。

___今はやめて!今はだめ!

 必死で意識を押さえ込もうとするが、まるでモンスターのようにそれは邪悪な姿を現しつつあった。


「あっ」
再び髪を引っ張られ、麻紀子の頭は無理やり上へと持ち上げられた。