必死で意識を集中させ、その違和感をつかもうとするが砂が指の間からこぼれ落ちるかのようにすり抜けてゆく。自然に歯をくいしばっていた。

「おい、どうしたんだよ」
八木が心配そうに小声で聞いてくる。

「なにか思い出しそうなの。なにか変なの」
声かけにとっさに答え、その声が大きかったことに気づき口をつむんだ。

「なにが変なんや」
すぐそばで声が聞こえ、麻紀子は固まった。視界に山本の足がうつっていた。全身の血が一気に降りてくるような感覚。

「あ・・・」

「さっきからどうも様子がおかしいな」
山本がのぞきこんできた。口臭がかかり、反射的に麻紀子は顔をそむけた。

 目をきつく閉じ、何度も呼吸をした。そうしないと息が吸えないのだ。