「先生」
女が鳥岡に顔を近づける。子どもをあやす母親のようだ。
「先生は関係ないの。お葬式にも来てくれたし、何度も私たちに謝罪しに来てくれたじゃない。もっとも1度も会わずに追い返しちゃったけれど。このノートを見つけてからは、復讐だけが私たちの生きがいだったの、それを奪わないでちょうだい」

「まちがってる」

「それは十分分かっているつもりよ。こんなことしたって良太は戻ってこない。でも、良太の無念を晴らしてやりたいのよ。安心して、もう少しで終わるから」

「・・・まちがってる」
苦しそうに鳥岡が言った。まっすぐに女の目を見ていた。

「うるさい!」
女は銃身を鳥岡の頭に振り下ろした。鈍い音がした。またたく間に鳥岡の右額から血が流れた。それでも鳥岡は女を見つめていた。