トイレの中から壁を叩く音が聞こえた。麻紀子は耳をふさぎたい気持ちでいっぱいだった。うるさいからじゃない、聞いてられないのだ。

 悠然と山本が通路を歩き、トイレへ向かう。

 通路側の生徒は息をのんで身を隠そうとしたが、それにも目もくれずに山本はドアの前に立つと銃口をそこへ向けた。

 咆哮が響く。咆哮がまた響く。咆哮が・・・。

 麻紀子は目を閉じてその数をかぞえながら涙があふれるのを感じた。

 もう、ドアの中からは悲鳴は聞こえず、何かがぶつかり倒れる音がした。

 山本は銃口を音がするほうへ向け、さらに2発を撃った。

 火薬の臭いと薄い日差しに浮かんだ煙が流れた。


 麻紀子はただただ、涙を流すしかできなかった。