「さっき声をかけられた子、ええと、杉山君?小山さんと森下君だっけ。あなたたちはどうなの?」

 ヒッという声が前列からもれた。小山が後ろから見ても分かるくらい震えている。いや、泣いているのだ。次は自分かもしれないという恐怖で涙が止まらないのだろう。

 杉山も青ざめた顔でうつむいていた。森下は気絶しそうないきおいで必死で顔をふせて首を横にふっていた。

「言いたいことがあるなら聞くわよ、最後にね」
その声にはまるで感情がなかった。裁判官が死刑判決を言い渡すかのようだった。

「いやぁぁぁぁぁ!」
突然小山が叫んで席を立った。まるで気が狂ったかのように大声で叫びながら通路をすりぬけてトイレへと走ってゆく。

___撃たれる!?

 そう思ったが、女はうるさそうに顔をしかめたまま動かなかった。トイレのドアが勢い良く閉まり、中からカギをかける音が響いた。

「誰かぁぁ!助けてぇぇぇ!」
まるでマンガのようなセリフを大声で叫んでいる。