そっと瞼を閉じると、波のように眠気が押し寄せてくる。
考える暇もなく、思考は夢の中へと落ちていく。
しかし、その瞬間。
「なあ、夏海」
朗がわたしを呼ぶ声が聞こえて、沈みかけていた思考が少しだけ浮き上がってきた。
わたしは、心地良く閉じていた瞳をのっそりと開ける。
「……なに」
しぱしぱと瞬きをすると、朗が首まで毛布を被りながら、長い睫毛を揺らし、わたしを見ていた。
「……さっき、ばあちゃんが俺たちを泊めてくれるって言ったとき、なんですぐにお願いしなかった?」
「……」
じっとわたしを見据える朗の静かな声が、狭い和室の中に滑らかに響く。