「……何も考えていません。でも、お金がないからホテルに泊まることもできないんで、たぶんどこかで野宿になるかと……」


認めたくないけど、認めないわけにもいかない。

真冬じゃないだけまだましだ、そう自分に言い聞かせて。



「あらあら、それは大変」


まるで大変じゃなさそうにおばあさんは言う。

朗も「そうだなあ」と他人事のように呟いていた。


わたしはそんなふたりを見ながら、つい、溜め息を吐いてしまう。

なんだか今日一日で一生分の溜め息を吐いた気がする。

そんなことを思って、またひとつ溜め息が出た。