「……そうだな」 じっとわたしを見ていた朗は、やがてふっと微笑んだ。 冬の日の空みたいに、綺麗で透き通った表情だった。 「海は遠いし、夏は暑いし、アイスはすごくおいしい」 「それに坂道は疲れる」 「うん、それも知ってる。あと夏海はすぐに怒る」 朗は呟いて、もう一度わたしに笑いかけた。 その表情があまりにも綺麗だったから、わたしは何かを呑み込むように、大きく息を吸った。 何を呑み込んだのかは、わからなかった。