「夏海、手伝ってくれ」
呆然と見ていたわたしを、朗が茂みの中から振り返る。
「手伝うって?」
「この子が入れるような穴を掘ってくれないかな」
手の中のそれに瞳を向けながら朗が言う。
わたしもそれを、一瞬だけ見遣って。
「……それくらいなら、いいよ」
自転車を道の脇に止めて、茂みの中に入った。
何か地面を掘れるようなものはないかと探して、落ちていた太めの木の枝を手に取った。
柔らかそうな地面にそれを突きたてて穴を掘っていく。
徐々に深くなっていくそこを、朗はわたしの後ろに立ちながら見つめていた。
「……ありがとう、夏海」
頭の上から、そんな声が聞こえた。