響く蝉の合唱、時々通る、車のエンジン音。

それらを遠くで聞きながら、わたしは額を流れる汗を拭う余裕もなく、ひたすら自転車を漕いでいた。


青々と茂る木々は、決してわたしたちを日の光から隠してはくれない。

どこまでも晴れ渡る青い青い空の下、ぽかりと浮かぶ大きな白い光。


太陽ってこんなに近かったっけ。

なんだか、手を伸ばしたら届いてしまいそうだ。

そんなわけ、ないんだろうけど。



「ううー……くそー!!」


なんでわたし、こんなことしてるんだろう。

くそ暑い中、雨みたいに汗を流しながら自転車を漕いで。


ちょっと前まで死のうとしてたはずなのに。

それが今、なんで。


こんなに、よくわかんないことに、必死になってるんだろう。




「朗!」


そして見えた、終わり。

永遠に続くかに思えたその道が途絶えた、そこは。


真っ青な空が迎える、坂道の頂上。