すでに止まりかけていた車輪にブレーキを掛ける。

むしろ後ろに戻りそうになるそれを、どうにか踏ん張ってその場に引き止めた。


「……どうした?」


突然止まったことを不思議に思ったんだろうか。

朗が後ろから覗き込んでくるけれど、わたしはそれには応えずに、重い足を上げて自転車から降りる。


「こーたい」

「え?」

「だから、交代!」


心臓は破裂寸前。

だけど坂道は、まだ先が見えないほどに続いている。

いやそもそも、よくここまで来られたなと褒めてもらってもいいくらいだ。


だってこんな道、後ろに人を乗せた自転車で、走り続けられるわけがない。


「でも、言っただろ。俺自転車の運転できないんだよ」


困ったように眉を下げながら、だけど相変わらず涼しげな表情で。

わたしは汗だくで、息も切れ切れで、まともに頭すら働かないってのに。