なあ、夏海。
お前はあのとき、すごく驚いた顔をしていたな。
まるで幽霊でも見るような顔だった。
そういえば、俺は幽霊なんじゃないかって、本当に訊いてきたっけ。
今思えば、失礼なやつだよな、お前は。
初対面であんなことを言うなんて、礼儀がまるでなってない。
おまけに少し口が悪かった。
怒りっぽくて、文句もたくさん言った。
だけど、それでも。
お前は、俺と一緒に来てくれただろう。
手をつなげば、握り返してくれて。
何もできない俺を連れて、お前は前を、進んでくれた。
俺はそれが、すごく嬉しかった。
俺ができないことは、お前がやってくれた。
俺が知らないことは、お前が教えてくれた。
知らない景色を見せてくれた。
知らない味を教えてくれた。
知らなかった想いを、お前が全部、俺にくれたんだ。
◇