周りの景色には見覚えがあった。
もちろん、一度しか見たことがないけれど、昨日のことだから鮮明に覚えている。
そうだ、このファミレスのあたり。
海に行ったらなにしようか、そんなことを朗と話していたっけ。
もうすぐ、あと少しだ。
朗が倒れたあの場所。
わたしたちの旅が、途切れてしまったあの場所。
近づくたびに、心臓のあたりが痛くなる。
自転車を漕いでいるからじゃない、もっともっと、別の理由で。
だけどスピードは緩めない。
絶対行くと決めたんだから。
もう一度始めると決めたんだから。
もう一度、きみと───
「……あ」