「そうか、ならいいんだ」


お父さんが呟いて立ち上がる。

たぶん、朝ごはん兼昼ごはんでも食べようとしているんだろう。


その背中を、わたしはじっと見つめて。


「お父さん」

「ん?」


振り返って首を傾げるお父さんは、まだ目が覚めきっていないのか、何度かしぱしぱと瞬きをしていた。


わたしは一度、自転車に目を遣る。

そして顔を上げ、今度は高い空に目を向けた。


青い青い、どこまでも青い空。


遥か彼方まで続く、近くて遠い、夢のような景色。



「お願いが、あるんだ」