「え!? ちょ、ちょっと待って!」
「ん?」
声を上げながら足を止めるわたしに、朗は怪訝そうな顔で振り返る。
「なに」
「い、行くってどこに……。それに、そもそもわたし、一緒に行くなんて一言も言ってないんだけど……」
『俺に命をくれない?』
確かにそう言われたけれど、「うん」と頷いた覚えはない。
わたしは今日、ここで死ぬと決めたんだ。
こんなよくわからない人のよくわからない行動に、付き合う気なんて全くない。
そんな義理も理由もないんだ。
わたしのことなんて、放ってどこかに行ってくれればいいのに。
わたしの思いに構わないのなら、わたしのすべてに、構わないでくれ。
なのに、やっぱりこの人は、そう思うわたしの思いにすら構わずに、涼しげに、ただ、笑う。
「死ぬことなんていつだってできる。でも、今は、今しかできない」