ゆるりと瞼を開けると、視界がぼやけているのに気が付いた。

だけどその理由には気が付かない振りをして、手の中で温くなったアイスティーを一口飲んだ。



それは、ごくん、と最後の一口が、喉の奥に流れていくのと同時だった。

ついさっき離れていったはずの足音が聞こえてきて、顔を上げればその先の廊下から、後藤さんが早足でこちらに向かって来るのが見えた。

ぺこっと音を立てて、手の中の紙コップがいびつな形に歪む。



「夏海ちゃん」


少し焦ったようにわたしを呼ぶと、後藤さんはわたしに視線を合わせるように屈んだ。


「夏海ちゃんに会いたいって人が来てるんだけど」

「……わたしに、ですか」

「うん。向こうの部屋で待ってるから」


首を傾げるのも考えるのも気だるくて、わたしは言われるままに立ち上がった。