「……ねえ、朗は、なんで海に行きたいの?」
少しペダルが軽くなった。
見る限りではわからないけれど、緩やかな斜面になっているみたいだ。
脇を走る線路の先、まだずっと遠くだけど、小さな電車の駅が見える。
あれを越えれば、もうすぐ街だ。
「見たいんだ。海が。理由は、ただそれだけ」
朗は言って、小さく息を吐いた。
なんとなくその声は、風に似ていたような気がした。
わたしはなぜだか空を見上げる。
心が止まってしまうほどに綺麗な、青い青い空だ。
朗が海に行きたい理由は知らなかった。
ただ、少し、思っていたことがある。