「ねぇ」


ルウコはボクを見上げたまま言った。



「ん?」



「こんな近くでソウちゃんの顔、初めて見た」



ボクは吹き出してしまった。



「何よ、何で笑うの?」



「いや、オレも初めて見たから」


「だから、何で笑うの?あたしの顔、変?」



「違うよ」


ボクは笑いながら考えていた。



あの本の事は、しばらくは忘れよう。


だってルウコはいつものルウコだし、今、この瞬間が幸せだから。



「なぁ、キスしてもいい?」


ボクが聞くとルウコは真っ赤になった。


「え!?ヤダ、心の準備出来てないよ!」



「えー?この体勢で心の準備とか言う?」


まだ何か言おうとしているルウコにボクは口がちょっと当たるくらいな軽いキスをした。



「まだいいって言ってなかった!」


真っ赤になって怒るルウコをギュッと抱きしめてボクは笑った。



あの本は…あの事は忘れる。そう思いながら。