メインステージからかなり離れた小さなステージは、照明が薄暗く、後はキャンドルだけの明かりで幻想的な感じの作りになっていた。

明日も夜中までフェスはあって、朝日が昇る明後日の早朝に終了だけど、夜中のこのステージは今日限定のものだ。


「キレイだねー」


ルウコはステージを見て感嘆の声を上げた。

ステージを見ている人達も昼間のオールスタンディングな雰囲気と違い、これもこのステージだけのものだけど、木で作られたベンチがあちこちにあって、そこに座っていたり、地べたに座っていたりすごくゆったりしている。


ボク達はちょうどよく空いていたベンチに並んで腰を掛けた。


「誰が出てくるのかな」


「シークレットだからな、好きなアーティストだといいけど」


そう会話しているうちにワっと歓声が上がってステージに目を向けた。


ステージに出てきたのは、普段はメロコアっぽい早いテンポのロックバンドのギターボーカルだった。


「ソウちゃん!!ウソみたい!!」


ルウコがボクの背中をバンバン叩いた。

ボクもこのバンドが好きだけど、ルウコは「この人大好き、好みなの」というくらいに熱狂的なファンだ。


ギターボーカルはアコギを手にステージ上にあるイスに座った。


『こんな機会もこのフェスならではなんで、カバーと何曲かアコギバージョンでやりたいと思います』


この言葉に大きな拍手が一斉に上がった。