「分からないの」
まるでつぶやくように涼子が言った。

「え?」

「・・・分からないの」
もう一度涼子が繰り返した。


「分からないって、それってどういうこと?付き合ってるんじゃないの?」

「うーん・・・何て言っていいのかも分からないや。カナちゃん、人を好きになるってどういうことだと思う?」

「へ、なにそれ?」
頭の中で黄色い点滅信号が光っている。はぐらかされた質問を問い詰めるべきなのか、それとも答えるべきなのか。

 
 それ以上何も言わない涼子を見て、後者を選択することにした。

「人を好きになるって、その人と一緒にいつもいたいって思うこと・・・かな?」
われながらありきたりの答えに笑いそうになったが、涼子は視線を外へ向けたまま、
「そっか、うん、そうかもね」
と言った。

 今日の涼子はなんだか変だ。