「はい、じゃお酒とお塩も入れてね」

「はーい」

 ・・・まったくどっちが姉なんだか分からない。

 それらを混ぜ合わせてもらい、形になってきたところへ餃子の皮で包んでもらった。

 私は監督さながらの態度で、
「うん。やればできるじゃん。これをお鍋に入れるといいよ」
と言い、まだ悪戦苦闘している恵美を置いて2階にある部屋に戻った。

 ドアを閉めるときに、
「キャー、中身飛び出ちゃった」
という悲鳴が聞こえたが、聞こえなかったことにした。


 部屋に入ると正面には大きな窓があり、外の景色が見える。住宅街の向こうに見える空にはすでに夜の気配が忍び寄り、オレンジは黒に塗りつぶされてゆく。宿題を取り出しながらFMのスイッチをつけると、軽快な洋楽が流れ出す。

 ペンを手にし、計算を解いてゆく。実際に音楽は聞こえているようで聞こえなくなるほど集中してしまうのだが、音がないのもさみしい。

 しばらく自分なりにはマジメに宿題を片付けていたのだが、次第につまらなくなってくる。これも、いつものことだ。