「私は、まだ子供だからよく分からないけど、不倫は絶対だめだと思う」
 口からすらすら言葉がこぼれた。

「そう?でも、どうしようもないことだってあると思う」

「どうしようもないことなんてないです!」

 その時、私の脳裏にあったのは、まぎれもなく優斗と涼子の両親のことだったのだろう。だろう、と言うのは、ここからの自分のセリフを後々になっても何を言っていたのか思いだせないのだ。それくらい勝手に口がしゃっべってしまったのかもしれない。


「カナちゃん・・・?」

「不倫なんて、不倫なんて・・・絶対誰かが悲しい思いをするんだもの。傷つけられた人はどうなるの?その人が自分だけで傷をかかえるならいい。それならいいの。でも、違うでしょ。人間は弱いから、傷つけられたらその痛みを誰かに向けてしまう。そうやってどんどん傷つく人が増える。だから、守られるべき人までが、ううん、そういう人こそ一番傷をかかえちゃうんです。そういう人を誰が守ってくれる?痛みをかかえてうずくまる人を誰が守ってくれるんですか!?」

 目の前がゆがむ。感情の波が爆発している。