ラジオが始まるまではまだ1時間以上もあった。

 バスタブにお湯をためてゆっくりつかっていると、満腹感も重なってウトウトとしてきた。はじめは「へんな形のお風呂」と思っていた浅く長い形のお風呂も、足を伸ばせて気持ちが良い。

 いよいよ明日は帰るんだ、と思うと本当に早い。
 今度はもう少しゆっくり来られるといいな、とも思う。
 貯めていたお年玉もほとんど使うことなかったな。


 身体を洗って、外に出るとまだ菜穂は帰ってきていなかった。

 あまりに静かなので、テレビをつけた。

 向こうではやっていないローカルな番組が流れている。ゴールデンの時間にも全国放送じゃない番組をやるなんて・・・と思いながらぼんやりと見るでもなく目で追う。


 トントン

 ノックの音が確かに聞こえた。

「はい」

 菜穂かな、と思ってドアの向こうに声をかけた。

「あ、私、涼子」

「え」
 
 あわててドアを開けると、少し上気した顔の涼子が立っていた。