「カナさぁ、涼子さんと小浜さんが一緒に消えたって意味分かってる?」

「意味って、ただ2人でいたかったんでしょ?」

「分かってるなら、早く部屋に戻んなさいよ」

「ほぇ?」

「だーかーらぁ」声をひそめながら顔の大きさが大きくなる。いや、近づいてきてるんだった。
「私と優ちゃんを応援するんでしょ?だったら気をきかせなさいよ」

「・・・あぁ」
 なるほど、ここにも2人っきりになりたい人がいたのか。
「そうだね、了解了解」

 私はオレンジジュースを左手で持って、よいしょっと立ち上がる。

「あれ?もう行くのか?」
 濡れた手をブラブラさせながら優斗が出てくる。

「うん、そろそろラジオの時間だし戻るわ」
 なるべく何気なく言ってみせてからドアを開ける。

「私はラジオ聴かないから、もう少しここにいるわ」
 菜穂の方がよっぽど演技がうまいや。

 不思議そうな優斗に手を振って、私は隣の部屋に戻った。