「まぁ、なんかあっけなかったよな」

「なにが?」
 ゲップをおさえながら菜穂が言う。

 ベッドにごろんと横になって、
「だってさ、アネキがこんなに簡単に戻ってくるとは思わなかったよ。もっともめたりするのかなーって」
 とくちびるをとがらせた。

「たしかにそうだよね」
 菜穂が同意を求めるように私を見つめた。

「涼子さん、きっとうれしかったんだよ。この世でひとりぼっちのような気がしていたのに、私たちが札幌までわざわざ来たんだもん。それでじゅうぶんだったんじゃないかな」

「まぁな・・・」
 涼子の痛みが分かっている優斗は納得も早い。


「ちょっとトイレ」と、優斗が立ち上がって消えたとたん、菜穂が私のほうを急にこわい顔で見てきた。

「な・・・なによっ」
 のけぞりながら菜穂を見返す。