「うん、でもありがと」

 そう言って前を向いた涼子が、ポツリと続けた。

「真っ赤になっちゃったんだ・・・」

「え?赤?」

「そう。よくね、ブルーになるって言うじゃない?」

「はい。私よくなりますよ」

 涼子はクスリと笑って、
「そう、そのブルー。でも、人はブルーよりもブルーになるとどうなると思う?」
と袋を抱え込むようにして尋ねた。

「さぁ・・・?」

「アメリカでは、ブルーよりもひどい状態のことをI am RED っていうの。つまり赤。私、その真っ赤になっちゃったんだよね」

「・・・」
 どう答えてよいのか分からずに涼子の横顔を見る。

「でも、今は色が消えたかんじ。ぜんぶ、カナちゃんたちみんなのおかげだよ」
 
 そう言って、涼子は私をみつめた。
 おだやかな微笑みだった。