「それじゃあ、おばあちゃんありがとう」

 涼子が玄関から声をかける。

 英美は、「お別れなんて感傷的になるから好かんさ」といい、台所から出てこようとしなかった。

「ばあちゃん、またなー」
 優斗も大声で呼びかけた。

「生きてたらさ~!」
 怒鳴るような声が返ってくる。きっと、これが英美なりのお別れなのだろう。涼子は肩をすくめてみせると、私たちは2台に別れてタクシーにのりこんだ。

 涼子がいつ帰るかは本人に任せるつもりだった。しかし、翌朝朝食の席で、涼子が宣言したのだ。

「もう帰るわ」と。

「まだ俺ら1泊ツアーがのこってるぜ」
と言う優斗に、
「それじゃ、それに私も便乗させてもらうね」
とにっこりと笑ったのだ。