「はい、一応そうなんですけど・・・。まぁ、免許とってから運転らしい運転はしていないですけど・・・」

 なるほど、ペーパードライバーのゴールド免許ってことか。それならうちの母親と同じだ。


「どうしましょう。もうお昼に行かなくちゃいけない時間なのに、お土産屋さんにすらたどりつけていない・・・」

 このままでは、すべてのツアーを終えるのは夜中になってしまうかもしれない。ここは、私がなんとかするしかないな。

「あの、遠田さん?」

「はい」

「私たち、今回のツアーはもうキャンセルさせてもらっていいですか?」

「え!それじゃあ私がクビになってしまいます~。ヒックヒック・・・」

「大丈夫、ちゃんとツアーには行ったことにして、アンケートにも『遠田さんのおかげで最高のツアーでした。彼女のようなすばらしいガイドさんに案内してもらえて幸せでした』って書くからさ」

 耳に届いた言葉を反芻するように、しばらく遠田は黙っていたが、
「ほんとうに・・・?」
とゆるゆると振り返って私を見た。

「もちろん。だって、遠田さんは最高のガイドさんでしょ?」
 大きくうなずいてみせる。