足音さえ消えてゆく



     第1章


  冬が空から落ちてくる






   【1】

  FM dream


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『みなさんこんばんは~、DJのアオイです。
 
 FMdream、今日もここ渋谷から生放送でお送りしております。
 12月に入ったと思ったら、もう2週間すぎちゃったね。
 なんかさ、12月はスピードが違って感じない?私だけ?
 
 最近の私は、アルバムのレコーディングで大忙しだよ。
 完成したらみんなにも聞いてもらうからね。

 さ、今日もみなさんからのお便りをまずはご紹介。
 ペンネーム「まっくん」から。

「アオイさんこんばんは。いつも楽しく聞いております。僕は中学2年の男子です。最近好きな子ができました。彼女にはまだ想いは伝えていませんが、どうすればいいでしょうか?」

 

 まっく~ん、よし、告白しちゃえ!
 やっぱ男は度胸だよ。告白してフラれても死ぬわけじゃないしさ。
 ここはガツンと勝負だよ。

 はは。無責任かもね。

 でもさ、人生一度っきりだよ。思ったように生きなくちゃ。

 さぁ、それでは今日の1曲目。まっくんにささげる曲をかけちゃうよ。
 
 いろいろ悩んだんだけどさ、応援歌って逆にテンションさがるから、失恋ソングで免疫つけといたほうがいいかな、と。

 アルバム「swallow」からの1曲です。
 アオイで「たとえば、風が」です。

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「たとえば風が」
【作詞・作曲 AOI】


あの町並みはなくなったよ

あの店も 今はもう

もし、あのころに戻れたとしても
私には 
あなたをつなぎとめるすべを
いまだに 知らない


もしかしたら
今のあなたは 思ったよりも
冷たいひとなのかも

もしかしたら
今のわたしは あなたよりも
冷たいひとなのかも

そう想うことで
少しは がんばれる気がしてる










   【2】

 彼女のいる風景




 朝の町並みが、その日は違って見えた。

 急ぐサラリーマンにまぎれて駅へと歩く道、いつものように角を曲がるとすぐに商店街につづく。

 シャッターのまだ閉まっている商店街をすすみながら、私は考えた。

「なにが違うんだろう?」

 いつもと同じ光景のはずなのに、何かが違って見える。

 駅について定期券を自動改札に通すころには、そんなことも忘れ、プラットホームへ続く階段を駆け上がる。