腕を振りほどいて叫んだ私に、彼女はぽかんとした顔をした。

「何・・・?なんのこと言ってるの?」

 その顔を見て、私は分かった。彼女は涼子や優斗のことよりも、自分がかわいいのだと。自分の身を守ることで精一杯なのだと。


「・・・いえ、いいんです。私、誰にも言いません」
そう私が言ったとたん、彼女の顔はみにくくゆがんだように見えた。いや、笑ったのだ。

「そう、ありがとう。もう絶対こんなことしないって誓うわ」

 そう言う彼女をしばらく見つめた後、私は頭を下げてきびすを返した。

 後ろで「絶対約束よ」と、叫んでいる姿を振り返る気もなく、行きとは違ってとぼとぼと帰り道を進んだ。