若い男と中年の女性が何が楽しいのかバカ笑いをしている。酔っているのだろか、ふたりとも糸の切れた凧のようにふにゃふにゃしている。

「まーくぅん、ねぇ早くホテル行こうよ~」

「待てよ、ゴムねぇとヤバいじゃん」

「だからぁ、今日は大丈夫って言ってるでしょぉ」

「まじヤベえって、旦那に殺されるぞ」

 中年の女性はこちらに背中を向けているので顔は見えないが、若い男の方は20代半ばくらいのチャラチャラした男だった。何がおかしいのかニヤニヤしている。

 私は、なるべく目線を合わせないように、2人の横にある酔い止めの薬を選ぶ。

「お、これいいじゃん」
 男が手にしたであろうコンドームの箱を、
「だからぁ、いらないってぇ」
と女性が手を伸ばして取ろうとした瞬間、手がすべったのかそれは床に軽快な音をたてて落下したかと思うと、私の足元に転がってきた。