「はぁい」
と2人同時に言って、そしてまた爆笑。そんな私たちに首をかしげて井上は姿を消した。

 ひとしきり笑った後、菜穂が涙を拭きながら私に言った。

「ねぇ、カナ。あさってって何時の飛行機で行くの?」

「ん?えっと、10時半とかだったと思うよ」
同じく涙をハンカチで押さえながら私も答える。

「そっか、よし私決めた」

「は?」

「私も行くわ」

「はぁ?」

「札幌」

「はぁぁぁぁ!?何言ってんの、受験まであと一ヶ月切ってるんだよ。ムリに決まってるじゃん」

 しかし、こういう時の菜穂が誰よりも頑固だと言うことを私は知っている。その後、どんなに説得しても菜穂は頑として受け付けなかった。

 菜穂はすばやく携帯を取り出すと、どこかに電話をかけだした。