「よし、それでよろしい。あのね、最近変なのはたしか。でも、受験前の菜穂を巻き込みたくなかったの。実は、ある事件というか問題が起きちゃってね」

「問題って?」

「聞かないほうがいいと思う。受験が終わったらいくらでも話してあげるからさ」

「カナ、私たち親友じゃなかったっけ?親友に隠し事するんだ?」

 いじわるっぽく言う菜穂。やっぱりそうくるよね。

「じゃあさ、教室で話そうよ。ここ、寒すぎる」

 いつの間にか夕暮れが終わりかけている。指先が冷たく、制服だけで外にいるのも限界だった。

「・・・教室で全部話してくれる?」

「うん」

「よし、それでよろしい」

 またしても私の言い方をマネする菜穂の手を引っ張って、私たちは屋上から避難した。