「あ…碧…っ」
「お前な、仮にも女子大生が一人で夜の公園にいんなよ。…ここら辺通行人が少ない代わりに、変質者が出たら確実に襲われるぞ」
「……うん。ごめん…」
俺は夏海の隣のブランコに腰掛けた。
ひどく小さく感じる、頼りない遊具。
少し漕いでみると、ギィ…と怪しい音がした。
「やっべ、壊れるかも」
「…気を付けてよ」
「夏海」
「…うん」
ゆっくりとブランコを漕ぎながら名前を呼ぶと、夏海も真似してブランコを漕ぎ始めた。
…昔っからそうだ。
無意識に夏海は、俺の真似をする。
幻想的な夜の時間は、世界で一番俺を素直にさせた。
「明日さ」
「…うん?」
「俺は仕事ないし、麻美は結婚式のヘアメイクリハーサルなんだよ」
結婚式、の言葉にぴくんと夏海が反応したような気がした。
それでも俺は続けた。
「…ドライブに行きたくないか?」
「え…」
「別に車じゃなくてもいいけど」