こらこら、お前何してんの。
こんな夜に、女子大生が一人で公園にいるなんて危ないだろ。
あくまでお兄ちゃんらしくそう説教してやろうかと思って、そっと近付いた。
だけど夏海の姿がはっきりと確認出来た辺りで、思わず足を止めた。
「……っ、碧……」
小さな息を、声を漏らして。
夏海は確かに泣いていた。
小さな頼りない手で、ブランコの鎖をぎゅっと掴んで。
…その震えた唇は、俺の名前を呼ぶ。
長いまつげに光る綺麗な滴。
ぽろぽろと零れる涙は白い頬を伝う。
少し茶色が混じった長い黒髪は、夜風にふわっと舞う。
――あぁ。
夏海のすべてが、今でもこんなにも俺を惹き付ける。