碧が「居心地がいい」って言った意味も、分かるような気がする。




「…そんなことないですよ」

「夏海ちゃん…?」

「いいじゃないですか。…好きな人が傍にいる。それだけで」



愛し、愛されたい。

その気持ちはとてもよく分かる。



だけど…


――その人が傍にいないと、それは始まることさえもないのだから。




「好きな人が傍にいるって、ものすごーく尊い奇跡です。…私は…その人が当たり前に傍にいてくれた時に、それに気付くことが出来ませんでした」



私はフェンスに掴まって、うんと腕を伸ばした。

少しリラックスしていた。