あおい。 …碧。 私は口を動かしてみた。 小さな小さな、声が出た。 …その名前を連呼して、 あの腕にまとわりつけるのは、 私だけだと思ってた。 そんなあの頃の自分に、思い切りデコピンしてやりたい。 「気付け」って。 その小さなしあわせに、気付けよって。 「…あの」 後ろから、あの声がした。 ビクッと体が跳ねた。 私より先に、香奈がばっと振り向く。 「夏海…ちゃんだよね?」