「ちゃんと分かってた。夏海が好きな俺は、優しいお兄ちゃんだってこと。夏海が悪かったんじゃない。…俺が、悪かったんだ」




碧がそう言った、時だった。



コンコン



ノックの音がして、ドアが開いた。

気まずそうな表情で顔を覗かせたのは沙知絵さんだった。


「ごめんなさいね。…碧、麻美(あさみ)さんが来た」


麻美さん。
彼女が誰であるかはすぐに分かった。



「…ああ、今行く」


碧は立ち上がって、軽くシャツを整えてから部屋に背を向けた。


そして出る直前、私を振り向いた。