もう前のようにはいかない。 初めっから分かっていたこと。 …私はぎゅっと拳をつくって、触れたい気持ちを抑えた。 でも。 「…寝癖ついてる。夜行バスか何かで来たんだろ」 「え……っ!?」 ため息混じりにそう言って、碧は私の前髪にふわっと手を伸ばした。 柔らかい、優しい感触。 『夏海、寝癖ついてる』 よく、そう笑いながら髪を撫でてくれた。 ―――あぁ。 碧はあの頃と、ちっとも変わっていない。 じゃあ変わってしまったのは何…? 「…おい、夏海」